内痔核(脱肛)、肛門ポリープ、直腸脱などが考えられます。それぞれ出血の有る場合と無い場合、脱出時の痛みの有る場合と無い場合があります。また、ひどくなると家事や歩行中・ゴルフ中などに出てくるようになる場合もあります。恥ずかしいため、20〜30年以上こういう症状を我慢されている方も少なくありません。比較的まれですが、直腸にできた大腸ポリープが脱出する場合もあります。大腸ポリープは肛門ポリープと異なり、大腸ガンに進む可能性がありますので、早めの切除が必要です。
血栓性外痔核が考えられます。ひどく痛む場合もあれば、軽い違和感のみ、あるいは全く痛みを感じない場合もあります。ストンと座ると当たって痛む、膨らんでいる部分を肛門に押し込むと楽になる、などの症状も見られます。見分けがつきにくいものとして、肛門周囲膿瘍の初期がこれとよく似た形で起こる場合もあるので注意が必要です。
肛門周囲膿瘍が最も考えられます。膿が下着につく場合もあります。
最も多いのが肛門部のスキンタグ(皮垂)と呼ばれるものです。これは、簡単に言えば肛門皮膚のたるみやシワのようなもので、大きな血栓性外痔核ができて治癒した後にこのような皮膚のたるみを残すことがあります。女性ではお産のときに肛門がうっ血して以来こうなったと言われる方が多いです。もともと肛門の外側にあるものですから無理に中に押し込んでも出てきます。詳しくはスキンタグの項目へ。
尖圭コンジローマが考えられます。かゆみなどを伴う場合もあります。
肛門科外来で最も良く見られる症状です。痛い場合と痛みを感じない場合があります。内痔核(イボ痔)、裂肛(キレ痔)で主に見られます。潰瘍性大腸炎、放射線性腸炎などの直腸の炎症で起こることもあります。
これも、肛門科ではよく見られる症状で、痛みはある場合とない場合があります。やはり内痔核と裂肛が主な原因です。便器や水が真っ赤になるのでびっくりされますが、多くの場合、便器にうすく広がっただけで、貧血を起こすほどの量ではありません。(びっくりしてフラフラしたというような脳貧血の症状を訴える患者さんはいますが。)しかし、こういった出血が1ヶ月以上毎日続いているような場合には貧血を起こしている場合もありますので検査が必要です。
脱出する3度以上の内痔核(脱肛)や直腸脱で、脱出していることに気がつかないまま歩行したりすると、下着に粘膜がこすれて血液がつきます。また血栓性外痔核でもたまに血栓の一部が破れて出血し下着につくことがあります。痔瘻では膿とともに血液がうすくつくこともあります。
上にも述べたように、痔核や裂肛の出血がこのように見えることもありますが、最も注意しなくてはならないのが大腸からの出血で、大腸ガン、大腸ポリープでこのような症状が見られます。また大腸に炎症を起こす病気である、潰瘍性大腸炎、放射線性腸炎、虚血性大腸炎でもこのような症状が見られます。いずれにせよ大腸内視鏡検査を受けることが必要です。
この症状は、肛門ではなく大腸からの出血であることが最も疑われます。病気としては、虚血性大腸炎や大腸憩室出血が原因のことが多く、大腸ガン、大腸ポリープ、放射線性腸炎、潰瘍性大腸炎でもこのような出血が見られることがあります。時には内痔核からの大量出血がこのような症状を示す場合もあります。また、頻度は多くありませんが、クローン病でもたまにこのような出血が起こります。いずれの場合も、診断には大腸内視鏡検査が必要です。
これは典型的な裂肛(キレ痔)の症状です。この場合、排便時だけでなくその後もしばらく痛みが続くのが特徴です。出血を伴うことも無いこともあります。入浴(あるいは座浴)したりして肛門を暖めると楽になります。
排便と関係なく常に肛門が痛い。1日〜数日前から始まった。症状が強い場合には、いてもたってもいられない、夜眠れない、痛くて座れない。
これは血栓性外痔核、肛門周囲膿瘍でよく見られる症状です。ほかにも化膿した膿皮症、肛門部アテローム(粉瘤)の場合もあります。いずれにせよ専門医による診断が必要です。
肛門部皮膚炎(湿疹)のほか、単純ヘルペスやまれに帯状疱疹(水疱瘡のウイルス感染症)でもおこります。診断には視診による診察に加え、血液検査が必要な場合もあります。
便はアルカリ性で皮膚を刺激しやすい性質があるため、肛門部には皮膚炎(湿疹)を起こすことがしばしばあります。アレルギーやアトピーの体質が特に無い方でも起こりますが、体の他の部位に湿疹のある方では肛門にも湿疹ができやすいです。詳しくは肛門部皮膚炎の項を参照してください。また、注意を要するものとして、足の白癬(水虫)がうつって起こる肛門部白癬や、婦人科のカンジダ症がひろがってくる肛門部カンジダ症の場合もあります。鑑別の難しい場合には皮膚科や婦人科の先生にご紹介するようにしています。
よく知られているように寄生虫の蟯虫(ギョウチュウ)によって起こります。肛門にテープを貼って虫卵検査をします。
2度以上の内痔核や直腸脱がある方で時々見られる症状です。手術できちんと治療すればこのような症状は無くなります。
直腸の前側の壁と膣の間を隔てる薄い筋肉が緩んで直腸の一部が前方の膣の方へ膨らみだしている直腸瘤が考えられます。ひどくなると排便しようといきんでも膣口から外へ膨らんでくるので、それを手で押さえ込まないと排便できなくなります。
上に挙げた内痔核・直腸脱、直腸瘤の他、肛門狭窄でも起こります。肛門を診察しても特に目立った異常を認めない場合もあります。排便というのは、自律神経を無意識のうちにコントロールしておしりを締める括約筋群を緩めると同時に、いきみによって意識的に便を押し出すことにより可能になるので、括約筋を緩めることがうまくできていないといくらいきんでも排便できないことになります。このような状態はアニスムスと呼ばれます。