以下に、大腸肛門科で訴えの多いおなかの症状を挙げてあります。実際には、便が細い、便が回数を分けて出る、おなかが張るなどの症状は必ずしも大腸に異常があるとは限りません。しかし、内視鏡で異常のないことを確認しないと確実な診断はできませんので、怖がらずに一度は大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
便が軟らかい方、便が1日に回数を分けて出る方などでは時々見られ、必ずしも異常とは限りません。しかし、直腸やS状結腸に狭窄をおこすような大腸ガン、大腸ポリープの可能性もありますので、大腸内視鏡検査が必要です。
朝、最初に排便があった後に、さらに何回か少し時間をおいて繰り返し排便のあるタイプと、1日のうちに時間を分けて毎食後などに排便のあるタイプがあります。前者では、大腸の上の方にある便が肛門近くの便が排出された後に少したってから下の方に送られてきて、順次便意を起こし排便が起こります。後者では、食事や運動などが腸を刺激して排便を促します。このような症状が5〜10年以上続いていて変化が無いということであれば体質的な腸の習慣ということが考えられますが、最近半年くらいで起きてきたような場合には大腸ガンや大腸ポリープによる症状である可能性があります。いずれにせよ、一度は大腸内視鏡によるチェックが必要です。
直腸やS状結腸に、大腸ガン、大腸ポリープができている可能性があります。実際には単にストレスなどで便意が瀕回になっている場合も多いので、心配するよりはまず検査を受けましょう。
【肛門の症状】の「肛門から血が出る」の項を参考にしてください。
便秘で便がたくさんたまっていたり、あるいは便秘でなくとも便が下におりてくると、腸が張って痛みを感じることがあります。腸は、内側の粘膜には知覚が無く痛みも感じませんが、腸管壁が引き伸ばされると痛みとして感じます。(このため、内視鏡検査のときに大腸を無理に押していれると大腸壁が引き伸ばされて痛みを感じます。)下痢のときに腸の動きが高まって(亢進していると言います)、おなかが痛むのも同じ理屈で、腸の激しい動きで局所的に腸管内の圧力が高まり、腸管壁の一部が引き伸ばされるものと考えられます。排便前の痛みはS状結腸で起こるため、左下腹部に感じることが多いです。便秘や腸炎以外にも、大腸ガンや大腸ポリープで腸の流れが悪くなっていてもこのような症状が起こるので、繰り返しこのような痛みが続く場合には大腸内視鏡検査が必要です。
上に述べたような排便前の腹痛と同様、腸管が張っておこります。やはり繰り返し起こるようなら、大腸に異常のないことを確認するために大腸内視鏡検査をお勧めします。
腸管の緊張状態が強く、大腸に強い蠕動運動の見られる方によく見られる症状です。過敏性大腸症候群と呼ばれることもありますが、それほど典型的でなくても普段からこのような傾向を自覚されている方は多くいます。一般には精神的ストレスも影響していると言われます。なるべくストレスのかからない規則正しい生活をして、適度な運動をし、野菜や海草などの繊維質のものを多く取るようにすることが大切です。やはり、便通があまり困難になるようであれば、一度大腸内視鏡検査で大腸を調べる必要があります。
ガス(おなら)はその大部分が食事などと一緒に口から入ってきた空気であり、腸管内で発生するガスはごく一部です。ですから、精神的なストレスのたまっているときに無意識のうちに空気を飲み込んでしまい、排ガスが多くなることが見られます。しかし、腸が健康でない場合に腸管内で異常発酵がおこりガスが発生することもあります。予防としては、ストレスの少ない規則的な生活をし、ヨーグルトなどの乳酸菌や野菜・海草などの繊維質のものを多く取ることが必要です。あまりガスが出て、おなかが張って苦しいときには大腸の検査をお勧めする場合もあります。
このような場合には腸の慢性炎症を起こす病気を考える必要があります。具体的には、潰瘍性大腸炎やクローン病と言ったものです。大腸内視鏡検査で正確な診断をすることが必要です。
急に腹痛が起こり、下痢に続いて血液が繰り返しトイレで出る症状があれば、虚血性大腸炎が疑われます。数日便秘した後に起こることもあれば、とくに誘因無く起こることもあります。また、大腸憩室出血の可能性もあります。いずれの場合も痛みの程度は様々で、ほとんど腹痛を感じないこともあります。外来患者さんでこのような出血が見られたら、すぐに大腸内視鏡検査を行い診断します。大腸憩室出血の場合には内視鏡で止血を行う場合もあります。その他、大腸ガンからの出血の場合もありますので、大腸内視鏡検査は必須です。まれに大腸憩室出血では輸血が必要なほどの出血の起こることもあり、その場合は入院のできる病院にご紹介します。