当院では、おしりにやさしい、溶かして飲む下剤「モビコール」を積極的にお勧めしています。この下剤は、便秘のためにおしりを痛めてつらい思いをされている方の救世主となりうる画期的な下剤です。
この下剤がなぜ、「便秘でおしりを痛めた方の救世主」になるのか、 それを説明した動画を作成しましたので、便秘にお悩みの方は是非ご覧ください。
動画で見るのは面倒という方のために、文章でもご説明しておきます。この下剤の最大の特長は、便の先端が軟らかくなり、便がつまらずにスムーズに出るため、おしりにとても優しいということです。このように便の先端が柔らかくなる下剤は「モビコール」だけと言っても過言ではありません。
従来の下剤はとにかく便を出せばいいだろうという設計思想で作られていますので、しばしばありがちなのが、先端の便は硬いままなのに後ろの方の便がゆるくなってしまい、先端の硬い便が急かされるようにドーンと押し出されて肛門を痛めた後に、ゆるい便が一気に出て肛門をさらに痛めるというパターンです。このため、従来の下剤を飲んでも、便は出るには出るが、おしりの具合が一向に良くならず、肛門の注入軟膏が手放せないということになってしまいます。また、最悪の場合、急に便意を催してトイレを探し回ったり、最悪の場合は漏らしたりということもありました。
これに対して、溶かして飲む下剤「モビコール」は便の先端が柔らかくなるというのが特長で、急な便意もなく、普通に便意が来て、便全体がいい硬さになって自然にスムーズに出るようになります。これはとても肛門に優しい出方なので、肛門に悩みのある方にはとても助かる下剤です。実際、他の下剤を飲んでも長年切れ痔を繰り返して悩んでおられた方が、モビコールを飲む様になって全く切れなくなり、肛門の注入軟膏が要らなくなった方がたくさんおられます。モビコールでうまく便が出せるようになった患者さんは、外来で診察に入ってこられた時に、皆さんニコニコして晴れやかな顔をされているので、すぐにわかるくらいです。モビコールには腸を動かす働きはあまりないので、便は柔らかくなるが便意が来ないという方には、他の漢方系の下剤などを組み合わせると楽に排便できるようになります。
では、モビコールはなぜこの様に便の先端を軟らかくできるのでしょうか。このお薬はポリエチレングリコールという、腸で吸収されない物質でできていて、口から入ると便と一緒に大腸まで降りていきます。そして、便の先端までこのお薬が行きわたっていると、これが水を吸い寄せて、便の先端を軟らかくしてくれるわけです。このため、モビコールは飲んで翌日すぐ効く下剤ではありません。4日から1週間は飲み続けて、このお薬が大腸の終点まで届かないと効果が出ません。ですから、飲み始めてすぐに効かないからといって飲むのをやめてしまうのではなく、少なくとも4日から1週間は飲み続けるようにしてください。(もし発疹などの副作用が出た場合は中止が必要です。)ポリエチレングリコールは大腸内視鏡検査の前に飲む洗浄下剤「モビプレップ」や「ニフレック」と同じ成分です。つまり、ある意味、モビコールは大腸検査用の下剤を小分けにして飲むようなものになっています。
また、もう一つのモビコールの特徴は、便の中で水分をキープしてくれるので、2、3日便が出なくても、軟らかい便のままでいてくれるということです。このため、排便が1日以上間が空いても、出る便は軟らかく無理なく出すことができます。
ただ、モビコールを飲む上でのハードルは、水に溶かして飲むようになっているため手間がかかることと、味があるということです。このハードルを越えられないと飲み続けられませんので、本当に便秘(と痔)に困っていて、どうしてもこれを飲んででも治したいという方にしかお勧めしていません。
さて、そのお味についてですが、モビコールを水に溶かすと、酸味とうすい塩味があって、例えて言えば、リンゴジュースとか梅ジュースの味とご紹介していますが、そんなに美味しいわけではありません。なので、どうしても味が苦手で飲めないという方には、本当のジュース(オレンジでもリンゴでもトマトでも)や、スポーツドリンク(ポカリスエットなど)ヨーグルト、牛乳、乳酸菌飲料(ヤクルトなど)、コーヒー、紅茶などから、さらにお味噌汁やスープなどに溶かしてみられても構いません。(温度は40度以下で溶かすようにしてください。)
上にも書きましたが、モビコールだけでは腸が十分に動かず、排便が十分でない場合は漢方系などの他の下剤との併用が必要になることもありますので、外来で様子を見ながら調整していくようにしていますので、ぜひ一度ご相談ください。
実際に内服される場合には、以下の製薬会社のサイトもご参考になさってください。
https://www.eapharma.co.jp/patient/movicol